3月4日の朝日新聞朝刊やasahi.comでは、『津波の海 サーファー1100人』と、南米チリ大地震による津波警報発令中に、日本各地でサーフィンを続けた一部のサーファーを厳しく非難していました。正直この記事を読んだ時には、あれだけマスメディアや波伝説・海快晴などで、海岸付近から高台への避難を強く呼び掛けていたにもかかわらず、全国で1100人(海上保安部調べ)のサーファーが避難指示・勧告を無視してサーフィンし続けたことをとても残念に思いました。
しかし、十分に波のあった週末に、何十万人というサーファーが海に入っていた、また入ろうと予定した中で、その多くの方が素直に避難勧告を守ったことを誌面ではまったく触れられていません。(涙)
消防庁の調査では、今回避難指示(勧告よりも生命への危険が高く、避難を急ぐのが指示)を出した9都道府県53市町村の住民約49万3千人のうち、避難が確認されたのは全体のわずか6.5%に過ぎなかったそうです。
警報を無視した1100人のサーファーや、避難指示が出ていながら沿岸地域住民の避難がわずか6.5%というのは、とても危険なことであり、大きな問題です。スマトラ大津波では20万人を超す人命が失われ、今回のチリでも津波の犠牲者は決して少なくなく、日本でも50年前のチリ地震の大津波では三陸海岸などで142名が亡くなり、1993年の北海道南西沖地震の時の奥尻島でも259名もの尊い命が犠牲となっているのですから。
なぜ、津波の教訓は生かされていないのか?
私はこう考えます。
津波の危険性とメカニズムがきちんと国民に伝わっていない! と。サーファーであろうと誰であろうと、命にかかわる災害が迫っている海に、あえて出ていく愚か者はいませんし、沿岸の地域住民も自宅よりも命の方が大切なはずです。きっと、波浪の波高と津波の高さを共通視して考えていると思うのです。
波浪と津波とは根本的に違い、わずか50cmの津波でもベテランサーファーを死に至らしめる危険性を秘めています。泳げるとか、ドルフィンが上手とか、そんなレベルの話ではありません。
気象庁発表の波浪の波高とは、有義波高といって、100波を順に並べて高い波から3割の波を平均した波高を言います。
津波の高さと有義波高とが同じ数値であっても、その危険性には天と地ほどの差があると言っても過言ではありません。しっかりと津波について理解をすることが、一刻も早い高台への避難へ行動させる強い動機となるはずです。この大切な事を、行政などの関係機関は国民に分かりやすく強く訴えるべきです。つづく。